「大腸内視鏡検査は大変」という声を聞かれる方も多いと思いますが、意外と検査自体はそれほど辛くないことが多く、経験された方に一番辛かったことを聞くと検査前の下剤(腸管洗浄剤)を飲むことをあげられる方が多いです。最近、サルプレップという新しい腸管洗浄剤が発売されましたので、当クリニックでこれまで使用している腸管洗浄剤と比較しながらコメントしていきたいと思います。

当クリニックで採用している大腸検査用下剤

モビプレップ

2021年7月現在、当クリニックでメインとして使用している下剤です。粉の入った容器に合計2リットルの水を入れて下剤を作ります(調製します)。当クリニックでは検査当日の午前中に、調整した下剤をコップ2杯(約360ml)飲み、そのあとに水またはお茶を1杯飲むというサイクルを繰り返す方法を採用しています。同じようにニフレックという基本2リットル飲む下剤と比べて腸管洗浄効果が高く、2リットル飲み切っても便が多量に残っていて検査ができない腸の状態であった方はほとんどいません。当クリニックでは原則、前日の検査食は購入してもらっていますが、便秘のない方の下剤は当日のモビプレップのみです。*普段便秘の方は1〜2日前から錠剤の下剤を服用してもらうこともあります。とても腸管洗浄効果が高いためメインで使用しているのですが、難点は、味のせいなどで飲みにくいことに加え最大2リットル飲む必要があることです。私は苦痛なく飲めましたが、そのような方は約2〜3割で、飲むのが大変だったと言われる方が多いです。なお、味は「おいしくない梅風味」という表現で説明しています。

ビジクリア

次は錠剤の下剤になります。以前にモビプレップなど液体の下剤が飲めなかった方や、水分を多くとることが苦手な方などに勧めています。錠剤なので味は問題ありませんが(少し、しょっぱいと言われる方が多い)、錠剤がけっこう大きく、これを200mlの水分で5錠、それを10回繰り返し、合計50錠も飲まなければいけません。また腸管洗浄効果もモビプレップと比べると弱いため、前日に別の下剤を追加することも多いです。

ピコプレップ

こちらは150mlの水に溶かして飲む下剤で、この下剤とおよそ1.5リットルの水分を摂取します。味はオレンジ風味で飲むことはまったく苦でないと思います。難点は前日と当日の2回、下剤と水分を服用する必要があること、腸管洗浄効果が弱く、前日に飲んだ下剤の効果が遅れて、夜間に便意を催すことがある点などです。飲みやすいのですが、普段便秘ぎみの方には使いにくいです。

サルプレップ

480mlのペットボトル2本分服用します。プラス水分はその倍服用します。

最後に新しく登場したサルプレップです。今後、当クリニックのメインとして使用していく予定です。モビプレップと比較しながら、述べていきます。

Q 飲み方は?

まず、モビプレップは水を入れて下剤を作る必要がありましたが、サルプレップは1本480mlのペットボトルに既製されていて、これを2本、合計960ml服用します。当クリニックでは、サルプレップを1/4本(120ml)飲み、それから水またはお茶をコップ2杯飲むというサイクルを繰り返してもらっています。結局、全体の水分摂取量としてはモビプレップと変わらないのですが、下剤そのものの量が約半分になるのは大きなメリットです。

Q 味は?

一番気になるところだと思いますが、正直飲みやすくはないと思います。モビプレップは「おいしくない梅風味」と上述しましたが、サルプレップは「おいしくないグレープフルーツ風味」という表現が適当だと思いました。どちらも「おいしくない」という表現を付けて説明しています。メーカーからの事前情報ではレモン風味でしたが、グレープフルーツ風味という方が少し近いと私や服用された患者さんの感想としては多かったです。そして私も含めサルプレップはモビプレップより味が濃い印象を受けた方が多かったです。推奨されている標準の飲み方は最初にサルプレップを1本分飲みますが、味が濃いためサルプレップを1/4本飲んで、水またはお茶を続けて2杯飲む方法の方が飲みやすいと感じました。味の好みは人それぞれ違うので、モビプレップとサルプレップを少量ずつ試飲した上で選べれればいいと思いますが、残念ながらそういった試飲用はありません。

1/4杯ずつ飲めるように裏に目盛りがついています

Q 薬価は?

どちらも1回検査分の薬価が約2000円で、違いはほぼありません。通常の3割自己負担であれば670円程度です。

Q  腸管洗浄効果は?

サルプレップが承認される際の臨床試験でモビプレップと比較されましたが、腸管洗浄効果は同等の結果でしたので、とても優れています。なお臨床試験では、モビプレップより盲腸・上行結腸の腸管洗浄効果が少し高かったですが、これまでの私の経験では違いは感じていません。

Q  その他メリット

モビプレップもサルプレップも事前に冷蔵庫で冷やしておくと飲みやすくなります。モビプレップの場合、服用量が多いので、体が冷えてしまうのが難点です。途中の水分を温かいお茶や白湯などにして対処することを勧めていますが、体の芯から冷えるためお風呂に入る方もいるくらいです。サルプレップは服用量が少ないので、モビプレップに比べると体が冷えにくいと思っています。またすでに既製されているので、医療者側の説明時間が短くなり、患者さんの手間も多少は少なくなります。

Q  その他デメリット

モビプレップもサルプレップも消化管でほとんど吸収されないので、腸閉塞などを疑うような特殊な状況でない限り安全に服用できる下剤ですが、サルプレップは重度の腎機能障害の方には使用することができません。また、大したことではないですが、当クリニックは患者さんのご自宅で下剤を服用してもらうので、480mlペットボトル2本分を持って帰るのが少し重いと感じるかもしれません。

まとめ

まだ誰にでも飲みやすく腸管洗浄効果の高い大腸検査用下剤はありませんが、当クリニックで採用していない下剤も何種類かあり、選択肢は多いです。その中でも新発売されたサルプレップは有力な選択肢になる可能性が高いと現時点では考えています。検査前の下剤を飲むことに抵抗感を持っている方が少しでも安心して頂けることを期待しています。