開院してからあっという間に1ヶ月が経ってしまいました。以前から「便秘」のことについて書こうと思っていましたが、前回のブログから間隔が空いてしまいました。最近、新しい便秘薬も発売されたばかりなので「結果的には良かった」と、ポジティブに考えることにしました。2017年に発刊された「慢性便秘症診療ガイドライン」を参考に記載していきます。

便秘とは?

医学的に便秘とは「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されており、単に排便の回数が少ないということではありません。基本的に排便の回数が少なくても辛いと思っていなければ便秘ではないと考えられています。排便回数にこだわりすぎると、逆に便秘症状が悪化してしまうことも多いです。

便秘の原因は?

なかなか便秘が改善しない場合は医療機関を受診し、大腸癌などの消化管の病気や糖尿病、甲状腺機能低下症などの全身疾患などがないかチェックすることが大事です。またお薬が原因である薬剤性のこともあるので確認してもらうのが良いでしょう。それらの原因でなければ、生活習慣や加齢、そしてストレスなどの心理的要因が原因となってくることが多くなります。

便秘にとって良いことは?

食生活では1.朝食を摂取すること 2.よく噛むこと(1回の咀嚼回数30回以上)3.水分を多く摂取すること(1日1500ml以上) 4.適度な食物繊維や乳製品の摂取 などが便秘に効果があると言われています。また適度な運動と休息が大腸の運動を活発化させ排便を促します。テニスやゴルフ、ヨガなどお腹をひねる動きや腹壁マッサージなども効果的です。排便時の姿勢は「ロダンの考える人」のような前かがみの姿勢が良いのは有名なことでしょうか?。そして慢性便秘症患者の6割程度に心理学的異常があることも言われています。ストレスとうまく付き合うことが便秘にとっても大事になってきます。

便秘の薬は?

上述の生活習慣の見直しで便秘が改善するのが一番ですが、十分な効果が得られずQOL(生活の質)が損なわれる場合は薬にて適切な排便習慣をつけることが望まれます。酸化マグネシウムといわれる便を軟らかくするタイプの下剤(緩下剤)が第一選択になりますが、高齢者や腎機能が低下した方は注意が必要です。他にセンノシド、アロエ、ダイオウなど腸を刺激して動かすタイプの下剤(刺激性下剤)がよく使われます。これらは最初のうちは効果がありますが、徐々に薬が効きにくくなること、習慣性や依存性があること、便意の消失があることなどの問題点があり、ガイドラインでは常用しないで必要に応じて内服する「頓服」しての使用法が勧められています。

新規に発売されてきた薬

2012年の発売なので新規とは言い難いですが商品名アミティーザ。酸化マグネシウムとは違った機序で便を軟らかくします。2017年に発売された商品名リンゼス。慢性便秘症で腹痛や腹満感などの腹部症状が強い方に効果的です。同じく2017年に発売された商品名スインプロイク。医療用モルヒネの副作用として生じる便秘に有効です。そして2018年4月に発売になったばかりの商品名グーフィス。大腸での胆汁酸の効果を強くして排便を促します。これらは重篤な副作用は起きにくいものばかりですが、医療費の3割負担でも1日60〜70円程度かかり、酸化マグネシウムの1日15〜30円程度より高額になるため主治医とよく相談されると良いと思います。

まとめ

便秘で悩まれている方は多いと思いますが、気にしすぎず生活習慣の改善などに取り組まれてください。効果がない場合は、医療機関を受診し原因となる病気がないかどうかのチェックを受け、あなたに合った薬を検討していただくのが良いでしょう。