今年2018年を迎えて3週間くらいの間にたまたま似たような患者さんが3人こられたので、今回はそのことについて書きます。多少違いはありますが、3人とも夜中に突然みぞおちの激しい痛みが出現して受診されました。おなかの痛みで頻度として多いのは胃腸炎であることは間違いないですが、医者は激しい痛みの患者さんをみた時には、脳や心臓、腸の血管が詰まる(閉塞)・裂ける(出血)、腸に穴が開く(穿孔)、腸や卵巣がねじれる(捻転)などの重篤な病気の可能性を考えます。そしてもうひとつ原因として考えるのが「石」です。具体的には胆石や尿管結石などがないか考えます。石が原因の病気は激しい痛みとして自覚されることが多々あります。
診断は?
3人とも「胆石」が原因でした。細かいことを言うと、胆嚢炎であったり、胆管というくだに胆石が落ちた総胆管結石という病名であったりしました。胆石による痛みは脂肪の多い食事を摂取してから数時間後にみぞおちから右脇腹にかけての痛みで出現することが多いです。ということで、今回は「胆石症 診療ガイドライン2016」の内容から皆さんが知りたいと思うことを一部抜粋します。
胆石ができやすい人は?
欧米人の方が日本人を含めたアジア人より胆石ができやすいそうです。日本人は5%程度、欧米人は20%程度。ちなみにインディアン系民族の胆石を持つ割合は60%以上とのことです。昔は中年の肥満傾向の女性にできやすいと言われていましたが、日本では女性より男性に多いデータもあります。なお先ほどの3人とも男性でした。そして胆石ができやすい人の特徴として肥満が挙げられます。生活習慣として、1日の摂取総カロリー数・炭水化物・動物性脂肪の過剰摂取、身体活動の低い生活などが胆石ができやすい人の特徴です。逆に果物、野菜、ナッツ、多価飽和脂肪酸、食物繊維、カフェイン、適度な飲酒、適度な運動などが胆石ができにくい因子として報告されています。
健診で胆石があると言われたけど?
胆石がある方を平均9年経過を追ってみたところ10%の方に症状が出たとの報告があります。ということは10年弱でも90%の方は無症状のままということになります。原則的に症状がない胆石は経過観察となっています。ただし一度症状が出ると、繰り返すがことが多くなるので、治療を行うことになります。
胆石の治療は?
基本的には腹腔鏡下胆嚢摘出術です。開腹せずに外科の先生が内視鏡(腹腔鏡)で胆嚢を摘出します。胆石だけをとるのではなく、胆嚢ごと取ります。幸い胆嚢を取ったあとも数%の方に下痢症状などが起きますが、ほとんどの場合、日常生活の質が落ちることはありません。胆嚢炎が重症であったり、総胆管結石があったりした場合は、内科で治療して、落ち着いたあとに手術をすることが勧められています。
まとめ
胆石も生活習慣が大きく関係しています。仮に胆石ができてしまっても悪さをしないことが多いですが、重症の胆嚢炎、黄疸や肝障害が出る総胆管結石(胆管炎)などを引き起こすこともあります。肥満を避けるような食生活の改善に努めましょう。