糖尿病治療はバリエーションが豊富

現在、さまざまな疾患に対しガイドラインという治療の指標が提唱され、全国どの医者にかかっても大きな治療方針の違いがでないように工夫されています。

消化器科領域ですと、胃潰瘍や逆流性食道炎などは使う薬の製薬会社の違いはあれど、似た様な薬で似た様な治療方針になると思われます。

一方、糖尿病ももちろんしっかりしたガイドラインがありますが、それぞれ医者の好みによって治療薬の選択に違いが出ることが多いと思います。

 

いかに患者さんそれぞれの生活スタイルに適した薬を使うか

糖尿病患者さんの大部分を占める2型糖尿病患者さんの場合、薬の前に食事・運動療法が大事になってきます。

食事・運動療法がいい加減になっていなければ、ここで主治医の本領発揮です。

あなたの主治医は、糖尿病の薬に対する膨大な知識を持ち合わせています。そこであなたは、できるだけあなたの生活スタイルを細かく主治医に伝えることをお勧めします。

患者さんによってはどうしても食事の時間帯が一定にできなかったり、1日のある時間帯だけ活動量が多かったりすることもあるでしょう。

あなた自身のインスリンを出す能力や、インスリンの組織への働き具合(インスリン抵抗性)も加味しながら、主治医はあなたの生活スタイルにマッチした糖尿病薬を処方してくれるはずです。

私のお気に入り

上記のように患者さんのイスンリンを出す能力(分泌能)とインスリンの働き具合(抵抗性)と患者さんの生活スタイルを加味して主治医は、さまざまな作用機序がある糖尿病薬の中からあなたに合った薬をチョイスしてくれますが、その上で私の好みを書きます。

なるべく1日の服薬回数が少ない薬

やや偏見もありますが、2型糖尿病患者さんは、あまり几帳面な方は多くないと感じています。1日3回服薬する薬などはどうしても飲み忘れが多くなる印象があります。私自身もたった1週間だけ服薬するピロリ菌を殺す薬(除菌薬)を1回忘れたりしました・・・

私は1日1回服薬の薬を優先して処方するようにしています。

体重が増えにくい、逆に痩せやすい薬

それまで高かった血糖が低くなると空腹感が強くなり、治療介入後に食べる量が増えて体重が増加してしまうこともあります。治療薬の中には体重が増えにくい薬があるので、より優先的に処方しています。医者によってはあまり好まない先生も多いですが、服薬にて体重を平均3kg前後減らす薬(SGLT-2阻害剤)も積極的に使用しています。

インスリンではない週1回の注射薬

最近、私が患者さんと相談してよく処方しているのは、GLP-1受容体作動薬というご自身で行う注射薬で、しかも週1回だけでよいタイプのものです。

GLP-1受容体作動薬は以前からあり、発売になった当初はよく処方していました。その当時は内服薬でぎりぎりまで頑張ってもらい、それでも血糖のコントロールがうまくいかず注射剤であるインスリンを使った方がいいと思った患者さんに対して、インスリン導入の前に使用しました。インスリンは患者さんからの抵抗感が強かったため、その前段階として処方していました。

その当時のGLP-1受容体作動薬に対し私は、思っていたより血糖が下がらない印象を持っていました。結局インスリンに変更することが多かったため、次第に使うことが少なくなり、直接インスリンを導入するようになりました。今思えば、もともと血糖値が高過ぎる患者にこれだけで目標値までもっていくのには無理があり、またインスリンと一緒(併用)に使用し続ける方法でもよかったと思います。

そんな中、週1回の注射だけでよいGLP-1受容体作動薬が発売され、より少ない投与回数を好む私としては患者さんと相談の上、使用してみることにしました。この注射薬はインスリンと違い針も最初からついており、使う量も一定で注射を1回1本使い切りでした。結果、週1回の注射は思った以上に患者さんに好評で、毎日の服薬より楽と言われる方もおられます。

以前使用していた時より早めに注射薬を導入しているおかげもありますが、それまでの内服薬より血糖を下げる効果も大きいものでした。また、1日1回のインスリンと内服薬を併用している患者さんに対し、インスリンをこの週1回GLP-1受容体作動薬に切り替えても血糖の悪化を認めず、毎日の注射から週1回の注射に変更になったことで喜ばれる患者さんも多いです。 *この変更は事前に患者さん自身のインスリン分泌能が保たれていることを検査で確認しています。また使用しているインスリン量も1日20単位未満の患者さんです。

まとめ

内服薬の中にも週1回のものが発売されています。薬のお値段も重要な選択基準になることを追加させてもらいつつ、あなたの生活スタイルを医者に伝え、よりあなたに適した薬を処方してもらいましょう。