胃カメラ196件、大腸カメラ117件でした。平日は検査予約が3〜4週間待ちの状況となっています。大腸カメラの方が少し予約が取りにくい傾向になってきました。夕方の検査枠を大腸カメラを優先するようにして対応しています。予約をキャンセルされる場合は早めにご連絡いただけると幸いです。

今月、大腸内視鏡検査で直腸にサイズの小さな黄白色の粘膜下隆起病変を認め、その場でUEMR(underwater EMR)で切除しました。結果は直腸NETで断端陰性で切除できました。いったん生検をして、それから紹介して治療した場合と比較して、患者さんが負担する時間・費用面で貢献できたと思います。

今回新たに取り上げるのは、健診で尿素呼気試験が弱陽性であったため当クリニックを受診された29歳男性の胃カメラ検査での画像です。

通常光 所見は軽微ですが前庭部に鳥肌胃炎を認めます

NBI

TXI

胃体部は胃炎なし

胃の奥側(前庭部)にのみ胃炎(鳥肌胃炎)を認め、その他は胃炎を認めませんでした。鳥肌胃炎はヘリコバクター・ピロリ感染によって生じることが多く、胃内の他の部位にも慢性胃炎の所見を伴うのが一般的ですが、この患者さんは前庭部のみの胃炎でした。

参考画像として同じ年代の28歳女性のピロリ菌による鳥肌胃炎です

ピロリ菌で前庭部に鳥肌胃炎を認める場合は、胃体部に萎縮性胃炎など他の慢性胃炎の所見も認めることが一般的です

NHPH(Non-Helicobacter pylori Helicobacter)胃炎を疑い、前庭部から4箇所生検を行い、やっと1検体からNHPHを同定してもらいました。NHPHはヘリコバクター・ピロリ以外のヘリコバクター属菌の総称で、ヘリコバクター・ピロリより大型で強いらせん構造を持ちます。胃癌の発生は少ないと言われていますが、胃MALTリンパ腫との関連が明らかになっています。

病理組織像(Gimesa染色) ピロリ菌と比較し大型でらせん構造をもつNHPHが観察される(白枠)

一部は上皮に刺さっているように見える

なお、この患者さんは過去に感染源のひとつと言われているイヌ、ネコの両方の飼育歴がありました。また、以前に血清抗ピロリ抗体も検査したことがあるも陰性とのことで、当院でも一応、尿素呼気試験を再検しましたが陰性でした。治療はピロリ菌と同じ除菌薬を服用してもらいました。1年後に胃カメラ検査を再検して治療効果を確認予定です。現況では簡単に確定診断がつきにくい疾患だと思いますが、見落とさないように丁寧な内視鏡観察を続けていきたいと思います。