胃カメラ180件、大腸カメラ108件でした。5月と2月は診療日数が少ないため例年内視鏡件数も少なくなりますが、現在予約状況はおよそ3週間待ちとなっています。予約の日程変更やキャンセルはいつものように多かったですが、今月は無断キャンセルが1件もなかったので、予約案内のこまかい変更が功を奏してきたとポジティブに考えています。

今回取り上げるのは胃がんリスク検診(ABC検診)にて血清抗ヘリコバクター・ピロリ抗体は陰性、血清ペプシノゲンは陽性のD群を指摘され当クリニックを受診された58歳女性の胃カメラ画像です。

胃体部の画像ですが、手前が白いまだら模様の萎縮粘膜で奥は萎縮が目立ちません。ヘリコバクター・ピロリ感染による胃炎では奥(肛門側)の前庭部から手前(口側)の胃体部の方に萎縮が進みます。こちらの画像は逆パターンになっており、そこまでめずらしい疾患とは言えませんが、自己免疫性胃炎と呼ばれるものです。参考画像として過去に当クリニックで経験した奥(前提部)が萎縮なし、胃体部が萎縮ありの逆萎縮と呼ばれる典型的な自己免疫性胃炎の患者さんの画像を載せておきます。

自己免疫性胃炎とは免疫異常に伴い胃の壁細胞が破壊され、萎縮性胃炎や内因子の分泌低下からビタミンB12の吸収障害などが起こる疾患です。根本的な治療はないのですが、胃癌や胃NET(神経内分泌腫瘍)を合併しやすいこと、ビタミンB12吸収障害から貧血や神経疾患を発症することもあるため、診断がついた場合は定期的な経過観察が重要になってきます。また、自己免疫性甲状腺疾患や1型糖尿病など他の自己免疫性疾患の合併も多いことが知られています。

内視鏡検査から自己免疫性胃炎を疑った場合、普段なら内視鏡下の生検だけを行い検査終了ですが、ちょうどこちらに載せる症例を探していたので、より診断を確定させるため血液検査の抗胃壁細胞抗体も調べました。抗胃壁細胞抗体は保険収載されていないため普段なら検査はしませんが、今回は患者さんに採血させてもらうことを同意いただき、費用はクリニック負担で行いました。

結果は予想どおり陽性でしたので、自己免疫性胃炎と診断しました。ちなみに、あとから検査費用を確認したところ7000円でした。これからも通常、当クリニックでは抗胃壁細胞抗体の検査は行わないことはご了承ください。

胃がんリスク検診(ABC検診)でのD群は萎縮が高度に進行しピロリ菌が住めなくなった状態で胃がんになるリスクがもっとも高い群として検診結果で説明されます。D群を指摘され当クリニックを受診される患者さんは稀ではありますが、その患者さん方に胃カメラ検査をした結果は、ピロリ感染ではなく、ほとんどが異常なし(血清ペプシノゲンがたまたま陽性になった)か、この自己免疫性胃炎というのが私の印象です。当クリニックの受診患者さんの平均年齢が若いのも影響していると思います。このような疾患もあるため、まだ胃カメラ検査の経験がない方は一度は検査をおこない、胃をしっかり診てもらいましょう。