胃カメラ206件、大腸カメラ106件でした。今月もキャンセルが多かったですが、代わりの予約が入ることも多くそれほど件数の落ち込みはありませんでした。現在、12月の予約がほぼ埋まっており、すぐに検査してほしい患者さんに対応できなく申し訳なく思っています。年明けからは混み具合が少し緩和されてくるのではと考えています。

今月の症例は当院でよく診断するようになった好酸球性食道炎、NHPH胃炎、自己免疫性胃炎の3疾患を今月も診断しましたので、何度も同じような画像提示でしつこくなっていますが、ご了承ください。最後にめずらしい疾患として少し前に経験した食道壁内偽憩室症という疾患の画像を載せます。

1、好酸球性食道炎

好酸球性食道炎です。NBIが見つけやすいです。

生検にて好酸球の浸潤を確認しています

 

2、NHPH(Non-Helicobacter pylori Helicobacter)胃炎

前庭部から胃角部にかけて鳥肌胃炎を認めます

NBIの方が鳥肌胃炎の凹凸感がはっきりしやすいです。

胃体部は胃炎所見なし

生検にてNHPH(Non-Helicobacter pylori Helicobacter)を確認

 

3、自己免疫性胃炎

胃体部小彎の萎縮粘膜

胃体部大彎の萎縮粘膜

前庭部に萎縮は認めません

抗胃壁細胞抗体が160倍以上でした

 

4、食道壁内偽憩室症

51歳女性で1年前に喉のつかえ感、食物のつまり感で当クリニックを受診されました。ちなみにアルコール多飲者です。その時に胃カメラ検査を行なったところ重度の食道カンジダ症を認め(生検でもカンジダ確認)、食道内腔も全体的に狭くなっていました。抗真菌薬を処方し様子をみることにしました。

全周性に厚い白苔が付着しており、生検においてカンジダを確認しています。

1年後に喉のつかえ感、食物のつまり感がまた悪化してきたため再診され、胃カメラ検査を再検しました。白苔は減ってはいましたが、食道内腔の狭さは改善しておりませんでした。

再検時の胃カメラ検査です。白苔は減っていますが、よく見ると小さなくぼみ(小孔)が多発しています。小孔がわかりにくいのは私(検査者)が疾患に気づかず撮影していたせいもあります。

食道verrucous carcinomaなど悪性疾患の可能性がないか札幌市内の食道疾患で有名な病院に紹介したところ、当クリニックの画像で食道壁内偽憩室症を指摘して頂き、症状の原因と考えられました。食道壁内偽憩室症とは食道腺導管の拡張により食道粘膜面は陥凹して憩室様に見える病態です。憩室と異なり固有筋層を超えないことから偽憩室症と呼称されています。危険因子として食道カンジダ症、アルコール多飲者、糖尿病、胃食道逆流症に多いと言われています。狭窄が強い場合は拡張術や手術が行われますが、この患者さんにはアルコールを控えることがまず行うべきことであることを説明しております。なお、見直すと1年前の内視鏡画像にも食道壁内偽憩室症を示す多発する陥凹(小孔)を認めていました。

1年前の少し白苔が少ない部位の写真です。見直すとこのときからすでに小孔が多発しているのがわかります。

紹介先でおこなった食道バリウム造影の写真を頂いたので、参考として載せておきます。

食道壁内偽憩室症の典型例では食道に嚢状にはっきりと突出する所見が多発しますが、本症例は食道腺導管の拡張が軽度なのか、毛羽立ち所見として認められます。食道全体が狭小化しているのもわかります。

自身の勉強不足を反省した症例でした。今回はボリュームが多くなってしまいましたが、来月からはめずらしい疾患を中心に1〜2症例だけ提示できればと思っています。