胃カメラ209件、大腸カメラ121件でした。予約が埋まっているのはもちろんありますが、現在スタッフの人数に余裕がないこともあり、臨時で当日の内視鏡検査ができない状況になっています。以前に当院でアニサキスを治療し、また同じような症状が出たので胃カメラをしてほしいというご相談を時々受けますが、やむなくお断りさせてもらっています。ご不便をおかけして申し訳ございません。

今月は健診、便潜血陽性で当クリニックを受診され、大腸カメラをおこなった40歳台男性の患者さんです。

写真は奥まで挿入したスコープを抜いてくる観察時のものですが、挿入した直後の直腸からこのような炎症所見があり、奥まで挿入している最中は潰瘍性大腸炎を考えていました。

奥(盲腸)に到達すると回盲弁に浅い潰瘍を認めたので、カンピロバクター腸炎と考えました。過去にカンピロバクター腸炎について取り上げてますので、リンクを貼っておきます。→12月の内視鏡実績(2022年)

抜いてくる途中の上行結腸ですが、写真のような普段の検査ではあまり見かけないびらんもありました。

スコープを抜いてくる観察時には主に写真のような炎症所見が全大腸に連続しており、「潰瘍性大腸炎に似ているカンピロバクター腸炎だな」と思い、何箇所か生検も行いながら検査を終了しました。検査後に本人に焼き鳥など生焼けになった可能性のある肉を食べたかどうか聞きましたが、食べた記憶がなかったのと、そもそもこの数ヶ月間は発熱、腹痛、下痢、血便などの症状もないとのことでした。

後日、便培養の結果ではカンピロバクター(キャンピロバクター)は陰性(ー)で、常在菌を除くと黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)が陽性(+++)でした。黄色ブドウ球菌は食中毒の原因菌として有名ですが、患者さんの自覚症状がないので、黄色ブドウ球菌による感染性腸炎と確定はしないも可能性としては考えられました。なお、生検では炎症は強いが感染症か潰瘍性大腸炎かの区別もつかないとの結果で、こちらからも診断の確定には至っておりません。便培養でカンピロバクターがたまたま検出されなかっただけか?、潰瘍性大腸炎なのか?、まったく別の菌やウイルスによる感染性腸炎なのか?、いろいろ可能性は考えられますが、本人の自覚症状がないため経過観察としています。今後、何か状況が変わった際にはこちらで報告したいと思います。以上、今月は内視鏡検査でしっかりした炎症所見があるのに、本人の自覚症状がなく、黄色ブドウ球菌による感染性腸炎かも?という症例でした。