胃カメラ196件、大腸カメラ124件でした。時短勤務ではありますが、今月から産休・育休からスタッフが復帰され、スタッフ数が以前と同じに戻りました。院長は昼食、昼休みはとらないため、お昼の時間に1件なら臨時で内視鏡検査を行うことはスタッフの状況によっては可能となりました。しかし、予約患者さんをお待たせすることもあったり、そもそもお子様の発熱などでスタッフが出勤していないこともあるため基本的に臨時検査はお断りすると思います。7年前の開院時の当院のように当日胃カメラ検査が可能な医療機関はあると思いますので、すぐに検査をしてほしい方はネットで「当日胃カメラ可能」などで検索されるとよいと思います。
今月の症例は30歳台女性の方で胃痛のため来院されました。過去にも胃痛、胃もたれなどで当院で2回胃カメラ検査を行い、ストレス性(機能性ディスペプシア)と診断しておりました。今回も同じ様な症状であったため、以前処方した薬を再度処方し様子をみてもらうことにしましたが、2日後に「薬を服用しても胃痛がまったく良くならない」と電話相談があり、急遽胃カメラ検査を行うことにしました。
胃カメラ検査をした結果は胃・十二指腸潰瘍など胃痛を引き起こす一般的な疾患は認めず、胃体部中心に上記写真のような多発する発赤びらんを認めました。これまであまり見ない形態の発赤びらんであったため、生検を行いました。
生検の結果、好酸球による高度の炎症を認めました。血液検査でも好酸球数の増加を認め、好酸球性胃炎と診断しました。プレドニゾロンという薬を30mg/dayで内服を開始したところ胃痛症状は顕著に改善されました。薬を減らしながら様子をみていますが、いまのところ経過は良好です。
食物などのアレルギー反応により好酸球の消化管局所への異常集積から好酸球性炎症が生じ、消化管組織が障害され、機能不全を起こす疾患の総称を好酸球性消化管疾患(EGIDs)と呼びます。炎症の部位により好酸球性食道炎(EoE)と好酸球性胃腸炎(EGEもしくはnon-EoE-EGIDs)に大別されます。好酸球性胃腸炎はさらに好酸球性胃炎(EoG)、好酸球性小腸炎(EoN)、好酸球性大腸炎(EoC)に分けられますが、明確に区別することは難しくなっています。症状は腹痛、下痢、嘔吐などですが、特徴的な症状はなく、今回の症例もそうでしたが機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群と診断されている中に好酸球性胃腸炎が潜在している可能性があります。好酸球性食道炎と違い、好酸球性胃炎に特異的な内視鏡所見はなく、さらには正常であることも多く、内視鏡検査のみで診断することは困難となっています。治療は全身ステロイド薬(プレドニゾロン)が用いられ、ほとんどの症例で一時的に病状が軽快しますが、60%程度が再燃し慢性化するとも言われています。そのほかの治療として抗アレルギー薬、さらに免疫抑制薬や生物学的製剤なども試みられています。好酸球性胃腸炎において原因食物の同定は困難な場合が多いため、食事療法は積極的には行われていないそうです。
参考として同じ患者さんの2年半前と1年前の胃カメラ検査の画像も載せておきます。

2年半前の胃カメラ
2年半前の胃カメラはほぼ異常所見なし

1年前の胃カメラ
1年前の胃カメラですが、小白斑が少しあり、調べると好酸球性胃炎の所見としても矛盾しないそうですが、この程度の所見で生検を行う気にはなれませんでした。これからは症状とアレルギー体質などを加味し、生検まで行えればと思います。