胃カメラ182件、大腸カメラ102件でした。今月もキャンセルが多く、代わりの予約も入らず何も検査できなかった枠も結構ありました。キャンセル待ちには対応しておりませんが、胃カメラ希望で時間の都合がつきやすい方はネットで予約状況を頻繁に確認してもらえると早めに検査できるかもしれません。大腸カメラも意外とキャンセルで枠が空いていることもあるため、時間の都合がつきやすい方は電話でお問い合わせください。

今月は20歳台前半の女性患者さんです。食事をする際に胸に強い痛みを感じるとの主訴で当院を初診されました。胃カメラ検査を行うと食道に周辺が少し盛り上がった浅い潰瘍病変が多発していました。

潰瘍部から生検を行いましたが確定診断はつきませんでした。

実は5年前にも同じような所見の患者さんをわずか2ヶ月間で4人も経験していました。以前のスコープのため画像は良くないですが4人分の画像も載せます。最後の1人は白色光の画像よりNBIの方がわかりやすかったので、そちらを載せています。

5年前も4人全員に生検を行いましたが、結局、診断はつきませんでした。この時の4人の患者さんも基礎疾患がない当時30〜48歳の比較的若い患者さんでした。2人は今回の患者さんと同じ胸痛、2人は食物つかえ感が主な症状でした。クリニックなので患者さんにも一部負担のかかる高額で特殊な血液検査は控えていますが、1人の患者さんにはサイトメガロウイルスやヘルペスウイルスなどの詳しい血液検査を行うも診断がつきませんでした。生検結果を伝えるために4人にその後の状況をお聞きしていますが、4人ともすぐに症状は改善していました。4人に共通して服用していた薬もなく、当時は食道潰瘍を引き起こす何らかの流行病(一時的な感染症)があるのかな?と思い、そのままになっていました。

その後は同じような患者さんを経験せず、今回久しぶりに同じような内視鏡所見の基礎疾患のない20歳台前半の患者さんを経験しました。あらためて調べると、全員そうだとは言いませんが、おそらく単純ヘルペスウイルスによる食道炎が一番考えやすいと思いました。ヘルペス食道炎は三叉神経節の神経細胞に潜伏感染している単純ヘルペスウイルスが再活性化し、唾液中に排出され、食道扁平上皮に感染して発症されるとされています。おもにHIV感染、癌、ステロイド使用などによる免疫抑制状態の患者さんに発症しますが、健常者での発症も報告されています。健常者の発症例は、単純ヘルペスウイルスの初感染であった場合が多いとの報告もあります。基礎疾患のある患者さんは抗ウイルス薬の投与が行われますが、健常者の場合は自然治癒することが多いと言われています。

来月は今月と似た食道潰瘍の内視鏡像ですが、診断がついた患者さんの画像を取り上げます。