当院は内視鏡検査希望の方が主な患者さんになっていますが、風邪(かぜ)の患者さんも診察しています。スタッフへの教育もかねて以前購入しましたが理解したと思って処分していた参考書を2つまた買い直して復習しました。読み返すと忘れていたことが結構あり、私自身の良い勉強になりました。医療関係者の方は一読したほうが良いですが、一般の方にむけてほんの少しだけ書いてみます。

岸田直樹:誰も教えてくれなかった「風邪」の診かた

山本舜悟:かぜ診療マニュアル

風邪とは?

ウイルス感染によって引き起こされる症状の総称を風邪と呼びます。ライノウイルス、コクサッキーウイルス、RSウイルス、エコーウイルス・・・・多種なウイルスが風邪の原因となり、そのため症状も多彩ですが、ポイントは「せき」、「鼻水」、「のどの痛み」の3つを急性に同時に同程度認めるか? 症状の強さは3つで違いがあっても構わないのですが、3つとも症状があると風邪であることが多くなります。

風邪で病院に行く必要は?

本当に風邪であれば病院に行く意義は高くないです。問題は本当に風邪かどうか?診断してもらうことが大事になってきます。すなわち風邪ではない重い病気が隠れていないかどうか?判断してもらうのが病院に行く意味になります。先にあげた2つの参考書も風邪のように見えて実は風邪ではない病気をいかに診断、治療するかを丁寧に細かく書かれています。

風邪の診断は簡単ではない

最初、のどがイガイガするなどの違和感があり、つぎに鼻水、少し遅れてせきが出て2〜3日でピークをむかえ7〜10日くらいで良くなったというのが風邪の典型ですが、典型例ばかりではないことが多いです。
鼻症状がメイン、のど症状がメイン、せき症状がメインなどに分けて、風邪ではない病気が隠れていないか考えていきます。とは言ってもなかなか風邪もふくめて自信をもって「今回の症状は〇〇(病名)です」と言えないことも多く、「少し様子をみて調子が良くならなければすぐに来てください」は常套句になっています。「緊急性のある病気かどうかを見逃さないのが一番大切な事なのでご理解いただきたい」といつも患者さんには説明しています。

風邪に抗菌薬は必要か?

治療ですが、ウイルス感染症の総称である風邪には抗菌薬は必要なく、むしろ副作用で体に害となることは周知されてきていると思います。ウイルス感染は多彩な症状が出やすいのに対し、抗菌薬が効果を発揮する細菌感染は原則として1つの臓器に1種類の細菌によって症状が引き起こされるので、症状は多彩にはなりにくいです。例として肺という臓器の細菌感染である肺炎では鼻水が主な症状にはなりにくいなどです。また、抗菌薬が効かない薬剤耐性菌が深刻な国際的問題になっていることから2016年4月に薬剤耐性(AMR)対策アクションプランが閣議決定されています。AMR対策のサイトが絵や動画を多用し、わかりやすくなっていますのでリンクを貼っておきます。こちら
当院ではその日に検査結果がでなく診断がつけられないことも多いため、高熱で具合の悪い患者さんが来院された場合は、痰や尿、血液などの培養検査(菌がいるか調べる検査)を先に行なったあと、診断が確定する前に抗菌薬を処方することもあります。原則、抗菌薬処方前には何らかの培養検査を出すようにしています。グラム染色というのを当院でするのが理想ですが、現時点では対応しておりません。

まとめ

風邪の診断は難しいこともあります。「前の風邪と違う」「いつもの風邪と違う」と思ったら、我慢せず医療機関を受診された方が良いと思います。本当に風邪であれば十分な水分摂取と休息が一番ですが、医者から風邪らしいと言われれば安心できますし、症状を和らげるお薬も処方してもらえます。せき、鼻、のどの症状に少し着目して病院にかかるか考えてみてください。