前回ブログで血圧のことを書きましたが、他にも血圧に関して時々される質問が「下の血圧だけが高いのですが、どうしてでしょうか?」といった内容です。今回も血圧、特に「下の血圧」である拡張期血圧を中心に書きます。なお下の血圧が高いとは90mmHg以上が目安になります。

拡張期血圧が高いとは

心臓が収縮して血液を送り出す時に太い血管にかかる圧力が収縮期血圧、俗にいう「上の血圧」です。逆に下の血圧(拡張期血圧)とは心臓が拡張して緩み、血液を太い血管に送り出していない状態の時の血圧です。下の血圧が高くなる原因は、心臓から遠い細い血管(末梢血管)が動脈硬化により硬くなって流れにくくなるために起きます。もう少し詳しく言うと心臓から近い太い血管(大血管)はもともと弾力性に富み、心臓から送り出される血液をやわらげるクッションの機能をもっています。収縮期には広がり、拡張期にはゴムのように元に戻ろうとする力で血液をさらに先の細い血管(末梢血管)へ送ることになります。図にするとこんな感じです。

*一部引用:大山善昭:高血圧患者のリスク評価-血管病変の評価方法-, Medical Practice vol.34 no.8 2017

この時に流れる先の末梢血管が硬くなっていれば流れにくくなり、圧が高くなりそうですね。

下の血圧だけ高いのはどんな人?

そうここでブログタイトルの答えですが、上の血圧は問題ないのに下の血圧だけ高いのは、末梢の血管は硬くなっているのに、大血管の弾力性はまだ保たれている人、多くは若い方に見られることが多いです。生活習慣の乱れから若い方でこのようなタイプの高血圧になることが多いですが、女性ホルモンであるエストロゲンが少なくなる更年期の方もこのタイプになることがあります。なお、歳をとるにつれ、また全身の動脈硬化が進むにつれ大血管も硬くなります。その結果、収縮期血圧は徐々に高くなり、それにともない末梢に送り出す血液量も減るため逆に拡張期血圧は低くなっていきます。

下の血圧が高い場合はどうすればいいの?

腎臓の病気や内分泌(ホルモン)関連の病気は別にして、基本的には動脈硬化が関係していると考え、前回ブログでも引用した高血圧治療ガイドライン2014の生活習慣病の修正6項目(減塩、脂質、減量、運動、節酒、禁煙)を見直すことが大切になります。同じ生活習慣を続けていると、問題なかった上の血圧が必ず高くなってきます。生活習慣が修正されても高い場合は、医療機関を受診して末梢の血管を広げる作用の薬(カルシウム拮抗薬やα1遮断薬など)も将来の合併症予防には必要になるでしょう。

薬で下の血圧が下がり過ぎた場合は?

最後に今回参考にした資料に強調されていたので、追加しておくと、高齢者になると上の血圧が高くなり、逆に下の血圧が低くなるのは前述のとおりです。ここで高齢者に上の血圧が高いために内服治療をおこなった際、下の血圧が下がりすぎると(60mmHg未満がひとつの目安)、心臓に悪影響を及ぼす可能性もあるとのことでした。心臓を栄養する血管、冠動脈と言いますが、この血管は拡張期に血液が多く流れるため血圧が低すぎると十分な血液が確保できないためです。*参考:廣岡良隆:拡張期血圧ーその規定因子,下げ方,下げ過ぎの危険, Medical Practice vol.34 no.8 2017

まとめ

下の血圧だけ高い場合も動脈硬化が進んでいる、すなわち血管が徐々に硬くなっている証拠です。何も症状はなくても高血圧を改善することは将来の心血管系の病気の予防、また中年期であれば認知症の予防にもなります。ここでも生活習慣の見直しが大事になってきますので、当てはまる方は意識を少し変えてみてはどうでしょうか?