女性の死因の第1位、男性の死因の第3位であり、数あるがんの中でもメジャーな「大腸がん」。大腸がんを早期発見・早期治療するために検診で行われるのが「便潜血検査」 消化器内科の外来にはよく便潜血陽性の患者さんがこられるので、今回も私見を交えて述べます。

便潜血検査とは?

綿棒で便の表面をこすることにより便を採取し、目に見えないわずかな便の血も感知して調べることができる検査です。この検査は通常、日を変えて2回採取しますが、そのうち1回でも陽性(プラス)となった場合は精密検査のために医療機関を受診するように言われます。

題名の「便潜血陽性だったら大腸カメラ?」の答えを先に言うとYESです。外来で便潜血が1回だけ陽性の患者さんが受診されてよく言われるのは「陽性の時は硬い便が出た時で、そのときは少し切れ痔になったと思う」といった内容です。たしかにその推測が正しいこともあると思いますが、そこでもう一度、便潜血検査を再検査するというのは、病気すなわち「大腸がん」をみつけるチャンスを逃すことになるかもしれません。

本来、大腸がんを見つけるのに一番よいのは大腸カメラ

便潜血検査なしに直接、大腸カメラを受けていただくのがもっとも良いというのは事実ですが、費用や手間などを考え、検診では便潜血検査が推奨されています。ここで大事なことは、便潜血検査は毎年受けて1回でも陽性になった場合に大腸カメラを受けるという流れを守ってこそ、より役立つ検査になることです。そう毎年受けてこその検査なのです。米国では便潜血検査を毎年するか大腸カメラを10年ごとにするかが同レベルとなっているガイドラインもあります。このどちらかの選択を内視鏡をされる医者に提示した場合は、ほとんどの医者が大腸カメラを選択するでしょう。便潜血検査では見つけられない大腸がんがある一定割合存在するからです。そして私も含めて毎年便潜血検査を受ける手間を考えるなら、一回大腸カメラを受けた方が効率が良いという意見もあるでしょう。

とはいっても大腸カメラはちょっと・・・

前日から食事の制限があり、当日も多量の下剤を飲み、検査のためにまとまった時間を空けなければいけない。さらに「痛いかも」、「恥ずかしい」などの気持ちのことを考えると、ちょっと検査を受けるハードルは高いと思います。「何事も経験することが大事」の精神で「大腸カメラを受けてみましょう!」というのは強引でしょうか? 安全性に関してはそれくらいの考えで気楽に受けていただける検査です。

最近は大腸カメラのスコープや周辺機器が進歩し「もう一生大腸カメラは受けたくない」と言われる方はほとんどいなく、「下剤を飲むのはちょっと辛かったけど、検査自体は楽でした」という方が多いです。なお私自身は下剤もゴクゴク飲めました。まずいプロテインにくらべたら、おいしいくらいでした。

それでも大腸カメラに抵抗感が強い方は便潜血検査を毎年受けていただき、陽性になった場合に「あきらめて⁈」大腸カメラを受けるスタンスをとって下さい。便潜血陽性がきっかけでがんが見つかった場合は、「不幸中の幸い」で治療でなおることが多いのも事実です。

また、1回(できれば2回は受けた方がベターですが)大腸カメラを受けて異常がなかった場合、その後に血便が出たり、ひどい便秘になったりしても「大腸がんがあるかも?」という心配が少なくなり、安心できる材料になります。

まとめ

便潜血検査で陽性になった場合でも問題のないことが多いですが、せっかく受けた検査を無駄にせず大腸カメラを受けるきっかけを与えてくれたと前向きにとらえて、ぜひ大腸カメラを受けて下さい。